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届いた品物の形が違う。それでも急ぎの名入れに対応できた理由

以前にも名入れ加工をご依頼いただいたお客様から、再び同じような内容のご相談がありました。
今回は、お急ぎのご依頼です。
まずカレンダーを確認し、データ作成、加工準備、実際の印刷、仕上がり確認までに必要な時間を考えました。
少し厳しい日程ではありましたが、作業の順番を組み替えれば、何とか対応できそうです。
そこで品物が届き次第、すぐに作業へ入れるよう準備を進めていました。
ところが、実際に届いた品物を確認すると、想定していたものとは形状が異なっていました。
同じような依頼でも、品物まで同じとは限りません
以前にも対応したお客様からのご依頼だったため、当初は前回と同じような方法で進められると考えていました。
しかし、蓋を開けてみると、今回の品物は前回とはサイズや形状が違います。
名入れするロゴや文字のデータを用意していても、品物を正確な位置へ固定できなければ加工できません。
特に複数個へ同じ位置で名入れする場合は、一つずつ目分量で置くわけにはいきません。
- 左右の位置
- 上下の位置
- 品物の向き
- ロゴの角度
- 加工面の高さ
こうした条件をそろえるために必要になるのが、品物を固定する専用の「治具」です。
今回の品物には、用意していた治具が使えませんでした。
しかも、納期には余裕がありません。
急きょ、新しい形状に合わせた治具を作り直すことになりました。
急ぎの仕事ほど、位置決めの準備が重要です
急ぎの名入れ加工というと、印刷機を速く動かせば間に合うように思われるかもしれません。
しかし、実際には印刷そのものより、品物を正確に並べるための準備に時間がかかることがあります。
一つの品物だけなら、その都度位置を確認しながら加工する方法もあります。
ところが、同じロゴを複数個へ入れる場合は、毎回位置を測っていたのでは時間がかかり、わずかな位置ずれも起こりやすくなります。
専用治具があれば、品物を決められたマスへ順番にセットできます。
作業時間を短縮するだけでなく、複数個の仕上がりをそろえるためにも、治具は大切な役割を持っています。
以前作っていたFreeCADの仕組みが役に立ちました
当社では、加工用の治具を3Dプリンターで製作しています。
設計には無料で使用できる3D CADソフト「FreeCAD」を使っています。
以前、AIに相談しながら、FreeCAD上で治具を作成するためのPythonコードを用意していました。
作ったのは、品物を縦横に並べる、四角いマス目状の比較的単純な治具です。
ただし、単に四角い穴を並べただけではありません。
品物を決まった方向へ軽く押し付け、毎回同じ位置に収めるための板バネ状の部分も設けています。
さらに、後から次のような設定を変更できるようにしていました。
- 品物を並べる縦方向の個数
- 横方向の個数
- 一つのマスの縦寸法
- 一つのマスの横寸法
- 治具の深さ
- 外枠の大きさ
- 板バネの長さ
- 板バネの高さ
- 板バネの厚さ
- 品物を押さえる方向
この「後から数値を変えられる仕組み」が、今回の急な形状変更で大変役に立ちました。
一から描き直さず、数値を変えて新しい治具へ
通常であれば、品物の形が変わると、治具の設計を一からやり直さなければならないことがあります。
しかし今回は、あらかじめ各寸法を変更できるようにしていました。
届いた現物を測り、FreeCADの中で、
- マスの縦横寸法を変更
- 治具の高さを変更
- 板バネの長さを変更
- 必要な個数に合わせて配列を変更
といった調整を行いました。
基本構造はすでにできているため、最初から形を描き直す必要がありません。
品物に合わせて数値を入れ替えることで、新しい3Dデータを短時間で作成できました。
完成したデータは、そのまま3Dプリンターへ送ります。
造形後に実物を治具へ入れて、収まり方と押さえ具合を確認。問題なく固定できることを確かめてから、ロゴなどの名入れ印刷へ進みました。
結果として、予定していた納期にも間に合わせることができました。
AIが印刷したのではありません
今回、AIが役に立ったことは確かです。
ただし、AIが品物を測ったり、治具を完成させたり、印刷位置を確認したわけではありません。
AIが手伝ってくれたのは、FreeCADで使用するPythonコードの作成です。
そこから先は、
- 現物の寸法を測る
- どの方向へ押さえるか考える
- 板バネの長さや厚さを調整する
- 3Dプリンターで造形する
- 実際に品物を入れて確認する
- 印刷位置を合わせる
という工房での作業が必要です。
AIは、考えた治具を形にするまでの時間を短くしてくれます。
そして、そこで生まれた時間を、仕上がりの確認や納期への対応に使えるようになります。
お客様にとって大切なのは、どのソフトやコードを使ったかではなく、予定外のことが起きても加工方法を組み直せることだと思います。
専用治具は、仕上がりをそろえるための道具です
専用治具を作る一番の目的は、作業を楽にすることだけではありません。
同じ品物を複数加工するときに、ロゴや文字の位置をそろえることが重要です。
板バネを設けた今回の治具では、品物をマスへ入れると、決められた方向へ軽く押し付けられます。
品物に多少の寸法差があっても、基準となる辺へ寄せやすくなり、位置のばらつきを抑えられます。
これにより、
- 複数個のロゴ位置をそろえやすい
- 品物の向きを間違えにくい
- セットにかかる時間を短縮できる
- 作業中の位置ずれを抑えられる
- 再注文でも同じ条件を再現しやすい
といった利点が生まれます。
治具は完成品としてお客様の目に触れるものではありません。しかし、名入れの品質や納期を支える大切な道具です。
「急ぎだからできない」で終わらせないために
もちろん、すべての急ぎのご依頼に対応できるとは限りません。
数量、品物の形状、加工方法、データの状態、材料の予備、ほかの仕事とのスケジュールによって判断は変わります。
また、届いた品物が想定と違えば、通常はそこで作業が止まってしまうこともあります。
今回は、以前から作っていた変更可能な治具データと3Dプリンターがあったことで、予定外の形状変更にも対応できました。
事前に作っていた仕組みは、その場ですぐに売上につながるものではありません。それでも、いざというときにお客様の困りごとを解決してくれます。
今回の仕事を通して、治具作りやAIの活用は単なる技術的な楽しみではなく、お客様への対応力を高めるための準備なのだと改めて感じました。
持ち込み品への名入れは、現物確認が大切です
ネットショップなどで購入した品物を、当社へ直送して名入れするご相談もあります。
ただし、商品写真だけでは正確な形状や寸法が分からないことがあります。同じ用途の商品でも、購入時期や型番によって形が変わっている場合もあります。
急ぎのご依頼では、できるだけ早い段階で次の情報をお知らせください。
- 品物全体の写真
- 名入れ面の写真
- 縦・横・高さの寸法
- 突起や段差の有無
- 名入れする位置と大きさ
- 加工数量
- 希望納期
- 予備品を用意できるか
- 購入予定の商品ページ
事前の情報が多いほど、治具の必要性や加工方法を早く判断できます。
現物が届いて初めて分かることもありますが、その場合も、できる範囲で加工方法を検討します。
まとめ
今回の仕事では、急ぎのご依頼を受け、納期に間に合うよう予定を組んでいました。
ところが、届いた品物は想定していたものと形状が異なり、準備していた治具が使えませんでした。
そこで、以前AIと一緒に作成していたFreeCAD用のPythonコードを利用。マスの寸法、治具の高さ、板バネの長さなどを変更し、新しい治具の3Dデータを短時間で完成させました。
3Dプリンターで治具を造形し、品物の固定状態を確認してから、ロゴなどの名入れ印刷へ進み、予定していた納期にも間に合わせることができました。
AI、FreeCAD、Python、3Dプリンター。
一見すると技術的な話ですが、その目的は、お客様からお預かりした品物を正確に並べ、仕上がりをそろえ、できるだけご希望の納期へ近づけることです。
表からは見えない治具作りも、当社のオリジナルグッズ加工を支える大切な仕事になっています。
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