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UVレーザーでレリーフ状の深掘りはできる?深度マップを使った実験を始めました

レーザー加工の動画を見ていると、金属へ人物や動物、龍、紋章などを立体的に彫り込んだ作品を見かけることがあります。
平らな線や文字を刻むだけではなく、高い部分と低い部分を作り、コインやメダルのような立体感を表現した加工です。
こうした加工は「3D彫刻」「レリーフ彫刻」「深掘り刻印」などと呼ばれています。
特によく見かけるのは、ファイバーレーザーを使い、金属へ深く彫り込んだ事例です。
では、当社で使用しているUVレーザーでは、同じようなレリーフ状の加工ができるのでしょうか。
まだ加工条件を確定できたわけではなく、お客様から正式にお受けするメニューでもありません。
今回は、UVレーザーによるレリーフ加工の可能性を調べるため、深度マップ画像を使った実験を始めたところまでをご紹介します。
レリーフ刻印は、普通のレーザー刻印と何が違うのか
一般的なレーザー刻印では、文字やロゴなどを一定の設定で加工します。
基本的には、同じデザインの中を同じ強さ、同じ回数で照射するため、加工した部分はほぼ同じ深さになります。
一方、レリーフ刻印では、場所によって加工の深さを変えます。
例えば龍の絵柄であれば、顔や角を高く残し、その周囲や背景を深く加工することで、平面の材料上に立体感を作ります。
そのためには、レーザーへ「ここは浅く」「ここは深く」という情報を伝える必要があります。
その情報を白黒の濃淡で表したものが、今回使用する「深度マップ画像」です。
深度マップ画像とは
深度マップは、一見すると白黒写真のように見えます。
しかし、通常の白黒写真とは、濃淡が表している意味が異なります。
写真のグレースケール画像では、白黒の濃淡が明るさや影を表します。
深度マップでは、白黒の濃淡が高さや深さを表します。
今回の設定では、基本的に次のように扱います。
- 黒に近い部分:多く加工して深くする
- 白に近い部分:加工回数を少なくして高く残す
- 中間のグレー:濃度に応じた中間の深さにする
なお、使用するソフトの反転設定によって、白と黒の働きは逆になります。
そのため、加工前には「黒が深くなる設定なのか」「白が深くなる設定なのか」を必ず確認しなければなりません。
単に写真を白黒にした画像では、影の部分が深く彫られてしまい、顔や形が不自然になることがあります。
レリーフ加工には、明るさではなく、立体物の高低差を表した画像が必要です。
最初の難題は、レーザーの設定ではなく画像作成でした
最初に難しいと感じたのは、レーザーの出力や速度ではありません。
加工に使用する深度マップ画像を、どのように作るかという問題でした。
例えば、1枚の龍のイラストや写真から、立体的な彫刻に使用できる深度マップを作れるのでしょうか。
本格的に作成するなら、3Dモデリングソフトなどを使い、立体形状を構築してから高さ情報を画像へ変換する方法が考えられます。
しかし、私にとって、これは簡単にできる作業ではありません。
通常の写真には、奥行きの情報が記録されているわけではありません。見た目から立体形状を考え、どこを高く、どこを低くするか決める必要があります。
このデータ作成が、レリーフ加工を始めるうえでの大きな壁になりました。
AIに龍の画像から深度マップを作ってもらいました
そこで考えたのが、AIによる画像処理です。
最近は、写真やイラストから奥行きを推測し、深度マップらしい画像へ変換する機能が見られるようになりました。
試しに龍の画像を渡し、「レリーフ加工に使用する深度マップ画像に変換してほしい」と依頼してみました。
出来上がったのは、インターネットでレリーフ用データとして見かける、白黒の濃淡が滑らかにつながった、少しモヤッとした画像でした。
以前にも、GeminiやChatGPTへ同じような変換を依頼したことがあります。
その画像を使って、実際に刻印したこともありました。
ただ、その頃に作られた画像は、立体物の高さを正しく表しているというより、元画像を白黒にし、陰影を強くしたものに近かったように感じます。
画像としては立体的に見えても、そのままレーザー加工へ使用すると、期待した場所が深くならなかったり、細部の高低差が不自然になったりしました。
それからしばらく時間が経ち、改めて試してみると、以前よりも深度マップらしい画像が作られるようになった気がします。
もちろん、AIが出力した画像を、そのまま正しい深度データと考えることはできません。
それでも、レリーフ加工の入口として試せるところまでは、進歩してきたのではないかと感じています。
1枚の深度マップを何層にも分けて加工する
今回試している方法では、深度マップの濃度に応じて、レーザーを複数回照射します。
濃い部分は多くのパスで加工し、薄い部分は少ないパスで止めます。こうして材料を少しずつ削り、高低差を作っていきます。
例えば最大100パスに設定した場合、最も深い部分は多くの層を加工し、高い部分は途中で加工を終えるという考え方です。
LightBurnの「3D Sliced」も、深度マップを使い、複数のパスに分けて一層ずつ加工するための機能です。LightBurn公式資料
ただし、ステップ数やパス数を増やせば、それだけで美しいレリーフになるわけではありません。
- レーザーの出力
- 加工速度
- パルス周波数
- 線と線の間隔
- 最大パス数
- 深度マップの階調
- 焦点位置
- 加工する面積
- 素材の硬さや均一性
- 加工粉や破片の除去
こうした条件が、すべて仕上がりへ影響します。
現在はステップ数やパス数を変えながら何度か加工していますが、まだ最適な値を見極められていません。
100パス、200パスと聞けば、時間がかかる理由が分かります
ファイバーレーザーでコイン状の金属を彫る動画を見ると、「100パス」「200パス」といった数字が出てくることがあります。
最初に見たときは、ずいぶん多い回数だと思いました。
しかし、深さを一度に作るのではなく、少しずつ材料を取り除いて積み重ねていく加工だと考えれば、それだけ時間がかかるのも納得できます。
深く彫るほど加工回数が増え、同じ設定なら加工面積が大きくなるほど時間も長くなります。
また、出力を上げて一気に深くしようとすると、素材によっては焦げ、溶け、割れ、周囲への熱影響などが増える可能性があります。
レリーフ刻印には、「時間をかければ何でも彫れる」という単純さはありません。
時間をかけながら、形を崩さず、素材への負担を抑え、深さを作っていく加工だという認識が必要です。
木・石・ガラス・アルミで試しています
今回、まずは小さな面積で、次の素材を使って試しています。
- 木材
- 石
- ガラス
- アルミ
これまでの通常刻印や繰り返し照射の経験から、木材、石、ガラスでは、表面にある程度の高低差を作れる可能性があると考えています。
アルミについても、材質や表面処理、レーザー設定によっては、材料を少しずつ除去できる可能性があります。
ただし、4つの素材が同じように彫れるわけではありません。
木材
木材は比較的削れやすい一方で、年輪、繊維、硬い部分と柔らかい部分の差があります。
同じ出力で加工しても、場所によって深さが変わる可能性があります。深くするほど焦げやヤニも目立ちやすくなるため、加工後の清掃や仕上げも課題になります。
石
石は種類によって性質が大きく異なります。
表面が細かく剥がれるもの、白っぽく変化するもの、割れやすいものなどがあり、「石」という一つの設定にまとめることはできません。
深く彫れたとしても、細かな形をどこまで残せるかを確認する必要があります。
ガラス
ガラスでは、表面に細かな変化や欠けを起こして白っぽい刻印を作れます。
しかし、木材のように均一に削れる素材ではありません。
繰り返し加工すると、細かなひび、欠け、表面の荒れが大きくなる可能性があります。高低差ができても、それを滑らかなレリーフと呼べる仕上がりにできるかは、まだ分かりません。
安全性も含め、慎重に試す必要がある素材です。
アルミ
金属への深掘りは、一般的にはファイバーレーザーが得意とする分野です。
UVレーザーでアルミにどの程度の深さを作れるか、また現実的な加工時間に収まるかは、今回確認したい点の一つです。
アルミの種類や表面処理によっても反応が異なります。表面の塗装やアルマイト層が取れただけなのか、母材そのものが削れているのかも、分けて確認しなければなりません。
「彫れた」と「商品としてお受けできる」は別の話です
今回の実験で、ある程度の凹凸が確認できたとしても、すぐに加工メニューへ加えられるわけではありません。
お客様から仕事としてお受けするには、少なくとも次の点を整理する必要があります。
- 深度マップを安定して作成できるか
- 希望する絵柄を立体データへ変換できるか
- 素材ごとの設定を再現できるか
- どの程度の深さを作れるか
- 細部が潰れずに残るか
- 加工時間を事前に見積もれるか
- 加工費が現実的な範囲に収まるか
- 材料の割れや破損にどう対応するか
- 加工後の清掃や仕上げが必要か
特に難しいのは、深度マップの作成と加工時間の見積もりです。
同じ50mm角の絵柄でも、浅い模様と深いレリーフでは、必要な時間が変わります。絵柄の細かさや素材の反応によっても、結果は大きく異なるはずです。
技術的に加工できることと、価格や納期を決めて安定して提供できることは、別の問題です。
現時点では、実験加工として取り組む段階だと考えています。
まずは小さな面積から確かめます
最初から大きな作品へ挑戦すると、加工時間が長くなり、どの設定が結果へ影響したのか分かりにくくなります。
そのため、まずは小さな面積に絞り、条件を変えながら比較していきます。
- 深度マップの階調を変える
- 最大パス数を変える
- 出力や速度を変える
- 同じ絵柄を異なる素材へ加工する
- 加工前後の厚さや凹凸を確認する
- 加工時間を記録する
- 洗浄前後の見え方を比較する
このようなテストを重ね、どの素材で、どの程度のレリーフ表現が可能なのかを確認していく予定です。
ただ立体的に見えるだけなのか、指で触って分かる高低差があるのか、さらに深く彫刻できるのか。
この違いも、結果を見るうえで大切だと思います。
UVレーザーの可能性として残しておきたい
現時点では、レリーフ刻印を正式な加工メニューへ加える予定はありません。
それでも、レーザー加工の魅力の一つとして、できる形は構築しておきたいと考えています。
UVレーザーは、通常の名入れ、写真刻印、細かな文字や模様だけでなく、設定とデータの作り方によって、まだ別の表現ができるかもしれません。
また、これまで難しかった深度マップの作成をAIが補助できるようになれば、レリーフ加工を試すまでの壁は、かなり低くなります。
ただし、AIが作った深度マップが、そのまま加工に適しているとは限りません。
AIの画像処理の進歩も確認しながら、画像の修正方法、素材ごとの設定、加工時間、実際の深さを一つずつ確かめていきます。
今回の記事は、その実験を始めた時点での記録です。
次回は、木材、石、ガラス、アルミへ実際に加工した結果を、加工時間や失敗例も含めてご紹介したいと思います。
果たしてUVレーザーで、どこまでレリーフ状の深掘りができるのでしょうか。
私自身、結果を楽しみにしながら、まずは小さな面積から試していきます。
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