ファイバーレーザーとMOPAレーザーの違いとは?
管理者用
ファイバーレーザーには、一般的な「パルスファイバーレーザー」と、より高度な制御が可能な「MOPA(Master Oscillator Power Amplifier)レーザー」の2種類があります。
MOPAレーザーは、通常のパルスファイバーレーザーと比べて、より柔軟な設定が可能で、マーキングの品質や応用範囲が広がるのが特徴です。
1. ファイバーレーザーの基本的な特徴
ファイバーレーザーは、金属や一部のプラスチックに対して高精度な刻印やマーキングが可能なレーザー技術で、主に次のような特徴があります。
✓ 高エネルギー密度 → 金属にくっきりとマーキングができる
✓ 高速加工が可能 → 量産向けのマーキングに適している
✓ 消耗部品が少ない → CO₂レーザーに比べて維持コストが低い
◆ 一般的なパルスファイバーレーザーの特徴
- 固定パルス幅(通常80〜120ns)
- 特定の素材(主に金属)に強い
- 黒・白マーキングが得意
- プラスチックのマーキング時に焼き焦げが発生しやすい
通常のファイバーレーザーは、主に金属への深い彫刻や黒マーキングに適していますが、色を変える加工やデリケートな素材の加工には向いていません。
2. MOPAレーザーの特徴
MOPA(Master Oscillator Power Amplifier)レーザーは、パルス幅と周波数を自由に調整できるため、より高度なマーキングが可能なタイプのファイバーレーザーです。
◆ MOPAレーザーの主な特徴
✓ パルス幅を調整可能(2〜500nsなど広範囲に設定可能)
✓ プラスチックやアルマイト加工された金属に色をつけたマーキングができる
✓ 熱影響を抑えたシャープなマーキングが可能
✓ 腐食しにくい白マーキングが可能
3. MOPAレーザーの強みと活用例
✓ ① アルマイト(金属)へのカラーマーキング
MOPAレーザーを使うと、アルマイト処理された金属(特にアルミニウム)に色のついたマーキングが可能です。
通常のファイバーレーザーでは黒や白のマーキングが主ですが、MOPAレーザーならグレー・ブルー・ゴールドなどの発色を実現できます。
◆ 活用例
- アルミ製のロゴプレートにカラーマーキング
- カスタムナイフや高級ペンの名入れ
- スマートフォン・ノートPCのアルミ製ボディのデザイン刻印
✓ ② ステンレスへのカラー刻印
MOPAレーザーを使うと、ステンレスにブラック以外のカラー刻印(青・赤・紫・黄など)が可能です。
パルス幅と周波数を適切に調整すると、表面酸化の制御によってさまざまな色を発色できます。
◆ 活用例
- 高級時計やジュエリーのデザイン加工
- 医療機器や工業部品の識別マーキング
- ブランドロゴやQRコードのカラー刻印
✓ ③ プラスチックへのシャープなマーキング
通常のファイバーレーザーでは、プラスチックへの刻印時に焼き焦げが発生しやすいですが、MOPAレーザーなら低いパルス幅で加工することで、くっきりとしたシャープなマーキングが可能になります。
◆ 活用例
- 家電製品や電子機器のロゴ刻印
- キーボードのキーキャップマーキング(消えにくい文字印刷)
- 自動車部品のプラスチック識別刻印
✓ ④ 腐食を防ぐ白マーキング
MOPAレーザーを使用すると、金属に対して腐食しにくい白マーキングが可能になります。
通常のファイバーレーザーでは、黒マーキングの際に表面が焼き焦げるため、酸化による劣化が発生しやすくなりますが、MOPAレーザーなら低エネルギーで白く発色させることができます。
◆ 活用例
- 医療機器の識別番号マーキング
- 精密部品のトレーサビリティ管理
- 航空機部品の耐久性マーキング
4. MOPAレーザーのデメリット
MOPAレーザーは非常に優れた加工能力を持っていますが、以下の点に注意が必要です。
・ 価格が高い → 一般的なファイバーレーザーよりも高価(同じ出力で約1.5〜2倍の価格)
・ 設定が複雑 → パルス幅・周波数などの設定を最適化しないと、希望のマーキングができない
・ 高出力機種が少ない → 深彫りや厚い金属の切断には向いていない
● 導入を検討する際は、「どのような素材にマーキングをするのか?」を考え、通常のファイバーレーザーとMOPAレーザーのどちらが適しているかを判断することが重要です。
5. どんな場合にMOPAレーザーを選ぶべきか?
MOPAレーザーは、以下のような用途で特に優れた性能を発揮します。
✓ アルマイトやステンレスへのカラーマーキングが必要な場合
✓ プラスチックや繊細な素材にシャープなマーキングを行いたい場合
✓ 医療機器・精密部品など、腐食を防ぐ白マーキングが必要な場合
🔹 MOPAレーザーを導入するのがおすすめの業界
- 精密機器・電子機器メーカー
- 医療機器・自動車部品メーカー
- ハイエンドなオーダーメイドギフト・ジュエリー業界
- 航空・宇宙産業のパーツマーキング
●一方で、単純な黒マーキングや深彫りがメインなら、通常のファイバーレーザーで十分対応可能です。
6. まとめ
項目 | 通常のファイバーレーザー | MOPAレーザー |
---|---|---|
パルス幅 | 固定(80〜120ns) | 可変(2〜500ns) |
金属への黒マーキング | ◎ 得意 | ◎ 得意 |
アルミ・ステンレスのカラー刻印 | ✖ できない | ◎ 可能 |
プラスチックの刻印 | △ 焼けやすい | ◎ 焼けにくく高品質 |
腐食しにくい白マーキング | ✖ できない | ◎ 可能 |
価格 | 比較的安い | 高価(1.5〜2倍) |
MOPAレーザーは、通常のファイバーレーザーよりも加工の幅が広く、高品質なマーキングが可能です。
特に「カラー刻印」「プラスチック加工」「白マーキング」が必要な場合には、MOPAレーザーの導入を検討する価値があります!